秩父山中で剣一筋に育った将軍の子*新吾、他ならぬその剣の故に将軍との親子対面の機会を失なったが、*の紋に束縛されない自由な毎日は楽しかった。掛川の宿でスリをたたきのめした新吾の背後で、徳川の天下が気に喰わぬと放言する男がいた。日本駄右衛門、彼は新吾を法相寺に軟禁して母であるお鯉の方から大枚の身代金を奪った。新吾は駄右衛門がひそむ山塞に乗り込み剣を交えた。その時狂気の若者、水野藩主和泉守の子忠明が新吾に斬りつけた。日陰の子新吾には忠明は斬れなかった。暗然として新吾は山を下りた。秩父の自源流真崎道場に戻った新吾は或る日、自源流を学びたいという数十人のやくざに会った。鹿島神宮祭礼の警固にあたる佐吉とその乾分だった。だが代官とぐるになった鉾田の虎松が佐吉の留守に自源流を学び、下山した佐吉は捕えられた。これを知らせに来た佐吉の乾分繁蔵の口から将軍代参としてお鯉...
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